自民党綱領
● 平成22年(2010年)綱領 平成22年1月24日 現状認識 我が党は、「反共産・社会主義、反独裁・統制的統治」と「日本らしい日本の確立」―の2つを目的とし、「政治は国民のもの」との原点に立ち立党された。平成元年のベルリンの壁の崩壊、平成3年のソ連邦の解体は、この目的の1つが達成されたという意味で、我が党の勝利でもあった。そこに至るまでの間、共産主義・社会主義政党の批判のための批判に耐え、我が党は現実を直視し、日米安全保障条約を基本とする外交政策により永く平和を護り、世界第2の経済大国へと日本を国民とともに発展させた。 1.我が党は常に進歩を目指す保守政党である (1) 正しい自由主義と民主制の下に、時代に適さぬものを改め、維持すべきものを護り、秩序のなかに進歩を求める (2) 勇気を持って自由闊達(かったつ)に真実を語り、協議し、決断する (3) 多様な組織と対話・調整し、国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる 2.我が党の政策の基本的考えは次による (1) 日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法の制定を目指す (2) 日本の主権は自らの努力により護る。国際社会の現実に即した責務を果たすとともに、一国平和主義的観念論を排す (3) 自助自立する個人を尊重し、その条件を整えるとともに、共助・公助する仕組を充実する (4) 自律と秩序ある市場経済を確立する (5) 地域社会と家族の絆・温かさを再生する (6) 政府は全ての人に公正な政策や条件づくりに努める (イ) 法的秩序の維持 (ロ) 外交・安全保障 (ハ) 成長戦略と雇用対策 (ニ) 教育と科学技術・研究開発 (ホ) 環境保全 (へ) 社会保障等のセーフティネット (7) 将来の納税者の汗の結晶の使用選択権を奪わぬよう、財政の効率化と税制改正により財政を再建する 3.我が党は誇りと活力ある日本像を目指す (1) 家族、地域社会、国への帰属意識を持ち、自立し、共助する国民 (2) 美しい自然、温かい人間関係、「和と絆」の暮し (3) 合意形成を怠らぬ民主制で意思決定される国と自治体 (4) 努力するものが報われ、努力する機会と能力に恵まれぬものを皆で支える社会。その条件整備に力を注ぐ政府 (5) 全ての人に公正な政策を実行する政府。次世代の意思決定を損なわぬよう、国債残高の減額に努める (6) 世界平和への義務を果たし、人類共通の価値に貢献する有徳の日本 ● 新理念 平成17年11月22日 わが党は、すべての人々の人格の尊厳と基本的人権を尊重する、真の自由主義・民主主義の政党である。 わが党は、自国の安全はみずからが守るという、気概と使命感をもち、正義と秩序を基に世界平和を希求し、その実現に貢献する政党である。 わが党は、貧困・疾病・環境など人類が直面する課題の改善に貢献し、地球規模の共生をめざす政党である。 わが党は、常に長期的・国際的視点に立ち、日本の方向を定め、改革を断行し、また、直面する課題に対しても安易な迎合に堕することなく、強い責任感と実行力をもって対処する責任政党である。 わが党は、先人達が築き上げてきた日本の伝統と文化を尊び、これらを大切にし、その発展をめざす政党である。 わが党は、政治は国民のものとの信念のもとに、都市・地方の幅広い支持のうえに立つ国民政党である。 ● 新綱領 平成17年11月22日 新しい憲法の制定を 私たちは近い将来、自立した国民意識のもとで新しい憲法が制定されるよう、国民合意の形成に努めます。そのため、党内外の実質的論議が進展するよう努めます。 高い志をもった日本人を 私たちは、国民一人ひとりが、人間としての普遍的規範を身につけ、社会の基本となる家族の絆を大切に、国を愛し地域を愛し、共に支え合うという強い自覚が共有できるよう努めます。そのために教育基本法を改正するとともに、教育に対して惜しみなく資源を配分し、日本人に生まれたことに誇りがもてる、国際感覚豊かな志高い日本人を育む教育をめざします。 小さな政府を 私たちは、国、地方を通じて行財政改革を政治の責任で徹底的に進め、簡省を旨とし、行政の肥大化を防ぎ、効率的な、透明性の高い、信頼される行政をめざします。また、国、地方の適切な責任分担のもとで、地方の特色を活かす地方分権を推進します。 持続可能な社会保障制度の確立を 私たちは、思い切った少子化対策を進め、出生率の向上を図り、国民が安心できる、持続可能な社会保障制度を確立します。 世界一、安心・安全な社会を 私たちは、近年の犯罪の急増やテロの危険性の高まりに対し、断固たる決意をもって闘うとともに、災害に強い国づくりを進めることにより、日本を世界一、安心・安全な社会にします。 食糧・エネルギーの安定的確保を 私たちは、世界の急速な変化に対応するため、食糧とエネルギー資源を確保し、経済や国民生活の安定に努めます。特に、食糧の自給率の向上に努めるとともに、食の安全を確保します。 知と技で国際競争力の強化を 私たちは、わが国の質の高い人的資源と技術力を基礎に、新しい産業の育成にも力を注ぎ、国際競争を勝ち抜くことのできる、活力と創造力あふれる経済の建設をめざします。 特に、日本の中小企業の活力を重視し、また、最先端技術の基礎的、独創的な研究開発を推進し、知と技によって支えられる科学技術立国をめざします。 循環型社会の構築を 私たちは、自然も人も一体という思いから、地球規模の自然環境を大切にし、世界の中で最も進んだ持続可能な循環型社会の構築をめざします。 男女がともに支え合う社会を 私たちは、女性があらゆる分野に積極的に参画し、男女がお互いの特性を認めつつ、責任を共有する「男女がともに支え合う社会」をめざします。 生きがいとうるおいのある生活を 私たちは、ボランティア活動や身近なスポーツ・芸術の振興、高齢者や障害者の社会参加を促進し、生きがいとうるおいのある生活をめざします。そのため、NGO・NPO諸団体をはじめ、あらゆる団体との交流を深め、また、まじめに働く人たちの声を大切にします。 ● 立党50年宣言 平成17年11月22日 わが党は民主主義のもとに、平和と自由を愛する国民政党として立党以来、ここに50年の歳月を刻んだ。この50年間、我々は国民の負託に応え、情理を尽くして幾多の問題を克服し、国家の安全と経済的豊かさを実現すべく、つねに主導的役割を果たしてきた。 この半世紀は、わが国が国際化の道を歩んできた時代でもある。 また、冷戦が終焉し、世界が大きく変動した時代でもある。 わが国は、いまや少子高齢化、国際テロリズムの激化への対応など多くの課題をかかえている。 我々は先人が明治の改革、戦後の改革に大胆に取り組んできたように、新しい党の理念と綱領に基づき、構造改革、行財政改革、党改革などの諸改革を進めていかなければならない。 我々はわが国の歴史と伝統と文化を尊び、その是をとって非を除き、道徳の高揚につとめ、国際社会の責任ある一員として積極的に活動する国家の実現を国民に約束する。 右、宣言する。
日本の存在感が増すにつれ、国際化のなかで我々は多くのものを得た反面、独自の伝統・文化を失いつつある。長寿国という誇るべき成果の反面、経済成長の鈍化と財政悪化からくる財政諸機能の不全に現在も我々は苦しんでいる。少子化による人口減少は国の生産力を低下させると言われる。我が国は、これ等の現実を明るく希望ある未来に変えるため、少子化対策とともに、教育の充実と科学技術開発に国民資源を注力することにより生産性を向上させ、長寿人口の活用と国民資質の向上、国際化への良き対応により、経済成長が達成でき、国民生活の充実が可能なことを世界に示さねばならない。
我々は、日本国及び国民統合の象徴である天皇陛下のもと、今日の平和な日本を築きあげてきた。我々は元来、勤勉を美徳とし、他人に頼らず自立を誇りとする国民である。努力する機会や能力に恵まれぬ人たちを温かく包み込む家族や地域社会の絆を持った国民である。家族、地域社会、国への帰属意識を持ち、公への貢献と義務を誇りを持って果たす国民でもある。これ等の伝統的な国民性、生きざま即ち日本の文化を築きあげた風土、人々の営み、現在・未来を含む3世代の基をなす祖先への尊敬の念を持つ生き方の再評価こそが、もう1つの立党目的、即ち「日本らしい日本の確立」である。
我が党は平成21年総選挙の敗北の反省のうえに、立党以来護り続けてきた自由と民主の旗の下に、時代に適さぬもののみを改め、維持すべきものを護り、秩序のなかに進歩を求め、国際的責務を果たす日本らしい日本の保守主義を政治理念として再出発したいと思う。我々が護り続けてきた自由(リベラリズム)とは、市場原理主義でもなく、無原則な政府介入是認主義でもない。ましてや利己主義を放任する文化でもない。自立した個人の義務と創意工夫、自由な選択、他への尊重と寛容、共助の精神からなる自由であることを再確認したい。従って、我々は、全国民の努力により生み出された国民総生産を、与党のみの独善的判断で国民生活に再配分し、結果として国民の自立心を損なう社会主義的政策は採らない。これと併せて、政治主導という言葉で意に反する意見を無視し、与党のみの判断を他に独裁的に押し付ける国家社会主義的統治とも断固対峙しなければならない。また、日本の主権を危うくし、「日本らしい日本」を損なう政策に対し闘わねばならない。我が党は過去、現在、未来の真面目に努力した、また努力する自立した納税者の立場に立ち、「新しい日本」を目指して、新しい自民党として、国民とともに安心感のある政治を通じ、現在と未来を安心できるものとしたい。